ドローンのお仕事~輸送・物流~
現在、急速に拡大しているAmazonや楽天などの通信販売サービス。
これら、インターネットでの販売が需要拡大するとともに、それを支える物流システムについても注目を集めるようになりました。
そこで今回は、次の新しい物流革命として期待されているドローンにおける輸送・物流への動向についてご紹介したいと思います。
増え続ける宅配便の個数
一年間で配送されている宅配便の個数、あなたは一体どれぐらいだと思いますか。
国土交通省が発表している宅配便取扱実績を見てみると、平成28年度の宅配便取扱個数は、なんと40億1,861万個!です。
これは単純に考えて、日本人一人が年間で40個の宅配便を受け取っているということになります・・・
しかもこの取り扱い量は、毎年増加しており、前年度と比較して、前年度比7.3%、2億7,367万個増えているという結果になります。
国土交通省「平成28年度 宅配便取扱実績について」
さらに、この宅配便の総数は、約2年前の総数なので、ここ最近でのAmazonのさらなる躍進や、メルカリなどスマホでの個人間取り引きの増加等も含めると、今後さらに増加すると考えることができます。
輸送・物流における課題点
これらの配送サービスの需要が拡大する一方で、まだまだ多くの課題が残されているのも現状です。
・再配達の非効率性
宅配便が増えたことにより、再配達の数も増加。特に日中家を空けることが多い都市部ではこの傾向が顕著です。
再配達の場合、単純に考えて2回同じ家に行く必要があることから、2倍の配送コストがかかるという計算になります。
・渋滞
配送量が増えるということは、商品の運搬も増えるということ。
つまり、トラックなどの交通量が増えてしまい、交通渋滞が頻繁に発生することに繋がります。
・労働者不足
宅配便の取り扱い量が増えたことにより、配送スタッフの数が圧倒的に不足している現状があります。
ヤマト運輸が宅配料金を値上げしたことなどがニュースにもなりましたが、現役ドライバーの高齢化なども重なり、人材確保についても大きな問題となっています。
ドローンによる物流分野での活用
このような小口配送などでの需要拡大と、宅配便における様々な問題を解決すべく、ドローンによる物流への活用が注目されています。
ドローンを活用することで、道路などのインフラに制限されることなく、物流に新たな可能性が生みだすことが可能になるためです。
そこで、近年、国土交通省ではドローンによる実証実験を民官共同で進めつつ、具体的なルール整備を行っているのが現状です。
具体的には国土交通省は2018年8月27日、山間部等の過疎地域等でドローンによる荷物配送モデルの早期実用化に向けた検証実験を行う5つの地域の選定を行いました。
「平成30年度CO2排出量削減に資する過疎地域等における無人航空機を使用した配送実用化推進調査 検証実験地域」
http://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/seisakutokatsu_freight_tk1_20180628kobo.html
ドローン配送による検証実験地域では、福島県南相馬市のほか、埼玉県秩父市、長野県白馬村、岡山県和気町、福岡県福岡市などが選ばれ、それぞれの地域で設立された協議会を通じて検証が進められます。
検証実験地域 | 協議会名 | 代表事業者名 |
福島県南相馬市 | 郵便事業配送効率化協議会 | (株)自律制御システム研究所 |
埼玉県秩父市 | 秩父市ドローン配送協議会 | 楽天(株) |
長野県白馬村 | 白馬村山岳ドローン物流実用化協議会 | (株)白馬館 |
岡山県和気町 | 和気町ドローン物流検証実験協議会 | (株)Future Dimension Drone Institute |
福岡県福岡市 | 福岡市ドローン物流協議会 | ANA ホールディングス(株) |
他にも、長野県伊那市などでは、KDDI(株)と(株)ゼンリンが参画し、市と一体となって、国内の行政として初めてドローンによる物流の事業化を目指した物流プロジェクトを開始しています。
日本経済新聞「伊那市・KDDI・ゼンリン、「伊那市ドローン物流プロジェクト」を開始 」
https://www.nikkei.com/article/DGXLRSP489201_Q8A830C1000000/
上記のような実証実験を行うことで、まずは人口減少や少子高齢化によって物流や交通機能が脆弱化している中山間地域などにおいて、物品の購入支援と地域経済の振興ができるのではないかと期待されています。
このように、国土交通省では、政府が主導となり策定を行ったロードマップにのっとり、早ければ2018年中にドローンを使った荷物配送を可能とすることを目指しています。
そのため、今後、これらの実験結果を踏まえ、まずは無人地帯など、人のいないエリアでのドローン活用が行われる可能性があります。
都市部でのドローン活用の動きも
また、ドローンによる物流サービスへの活用の動きは、都市部でも広がりを見せています。
まだまだ安全性確保など規制面の課題が多く残っていますが、数mの誤差が発生するGPS精度を補完するための「ドローンポート」の開発が進められています。
実際、国土交通省では、ブルーイノベーション(株)、東京大学と連携し、ドローンの目視外飛行における安全な自動離着陸と、安価に設置できる「物流用ドローンポートシステム」の研究開発のため、「ドローンポート連絡会」を複数回開催しています。
国土交通省「物流用ドローンポートの研究開発について」
http://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/seisakutokatsu_tk_000024.html
他にも、国家戦略特区の一つである千葉県千葉市では、ドローン宅配に関する実証実験が行われており、東京臨海エリアと幕張新都心エリアとの物流配送や超高層マンションでの生活必需品の宅配、侵入者へのセキュリティサービス、薬局からの処方箋の宅配など、どれも先進的な試みがされています。
千葉市「ドローンによる宅配サービス・セキュリティ」
https://www.city.chiba.jp/sogoseisaku/sogoseisaku/tokku/tokku_drone.html
まだまだ安全性の確保や受け取り方法、ドローンポートの設置や各戸への配達方法など、様々な課題が残されておりますが、大きな一歩であることは間違いありません。
ドローンの輸送・物流の鍵は「専用空路」
官民一体となって、様々な実証実験が行われている中、今後ドローンによる新しい物流サービスを実現するためには、統一された新しいルール作りが必須とされています。
現状、物流における明確な「空のルール」がなく、改正航空法で定められた150m以下の空域には、趣味や事業を含め、様々な用途でドローンが飛行しています。
そのため、今後、物流に最適化されたドローンの「専用空路」を設けることが必要です。
これにより、安全性の確保はもちろん、予め専用空路が設定されていることにより、今後登場する第三者のドローン配送事業者は、スムーズに配送サービスに参画することができます。
陸路の自動車やトラック、そして有人航空機である飛行機の間に、次の領域「ドローンの空路」を整備することが、今後の都市部における物流の発展に大きく影響すると言えるでしょう。
いかがでしたでしょうか。現在のドローンにおける輸送・物流の動向についてご紹介してきました。
ドローンの利活用における配送サービスの実現には、まだまだ大きな問題が山積みです。
しかし、着実に実証実験などを通じて整備が行われてきており、技術開発などによって、この動きが加速していくことも考えられます。
ぜひ今後の動向も、欠かさずチェックしてみてください。