神戸電鉄様の鉄道構造物の維持管理に係るコスト低減および安全性の向上に関する検証を支援しました

令和3年度ドローン活用実証事業における旭テクノロジーのレポート
神戸電鉄株式会社様(以下、神戸電鉄様)は、営業キロ数69.6kmにわたり山間部を主に走行しており、多くののり面・橋りょう・トンネルといった土木構造物を所有しています。これらの多くが建設から90年以上経過し、経年や老朽化による変形・劣化・損傷が進行している現状に直面しています。土木構造物の維持管理コストは鉄道事業において非常に大きなウェイトを占めており、安全性向上とコスト低減が喫緊の課題となっています。
旭テクノロジー(以下、当社)は、この重要な課題解決に向けた神戸電鉄様の実証試験において、現場でのドローン運用を全面的にサポートいたしました。本記事では、実証試験の概要と目的、当社が提供した具体的な貢献内容、そして得られた知見についてご報告いたします。
神戸電鉄様における維持管理の現状と課題
神戸電鉄様が抱える主な課題は以下の通りです。
- 土木構造物の維持管理コストの増大: 老朽化が進むのり面、橋りょう、トンネルの検査・補修費用が経営を圧迫しています。
- 安全性確保の難しさ: 高所や入り組んだ構造を持つ橋りょうの支承部、夜間作業が必須となるトンネルの検査など、作業員の安全確保が困難な場面が多く存在します。
- 検査効率の課題: 従来の検査方法である打音検査や目視検査は、高所作業車や軌陸車の使用、列車の運行停止を伴うため、時間的制約が厳しく、多大な費用と日数を要しています。
これらの課題に対し、神戸電鉄様はドローンを用いた検査実証試験を通じて、コスト低減と安全性の向上を目指しました。
ドローン活用による実証試験の目的
本実証試験の目的は次の通りです。

- 従来の打音検査に代わる安価な「浮き」検出手法の確立によるコスト低減。
- 検査員の安全を確保しつつ、橋りょうの支承部における変状確認を行う安全性向上。
- 軌陸車使用に伴う時間的・費用的制約を解消し、検査費用を大幅に削減するコスト低減。
- ドローン活用による維持管理コスト低減という業界全体の悲願達成に向け、情報共有と早期実用化を目指す事業の促進。
- 地下駅天井内の点検困難箇所に対し、マイクロドローンを活用して維持管理の効率化と効果的な改修計画立案に貢献する。
実証試験の具体的な内容
本実証試験は、神戸電鉄様、株式会社神鉄コミュニティサービス様を事業主・元請とし、当社(株式会社旭テクノロジー)が下請として参画しました。当社は、ドローンの飛行、写真撮影、および画像解析の業務を担い、実証試験の現場運用を最前線で実施しました。
赤外線カメラによるコンクリート検査(橋りょう、擁壁、水路側壁など)
概要:赤外線カメラを搭載したドローン(DJI MATRICE 300 RTK、ZENMUSE H20Tカメラなどを使用)の精密な飛行と撮影を行い、コンクリート構造物の温度データを取得しました。これにより、鉄筋の腐食等に起因する「浮き」と呼ばれる変状の検出を試みました。
成果: 太陽光がある環境では、温度の高い箇所と浮きの発生箇所が概ね一致するケースや、はく落防止材の下の断面修復箇所が検出できることが判明しました。ただし、太陽光がない場合や反射光、水分等の影響で浮きの検出が困難な場合があるとの知見も得られました。
可視カメラによる高所部の検査(橋りょう支承部など)
概要: 高所に位置する橋りょうの支承部(美嚢川橋梁、加古川橋梁、北鈴蘭台駅ほか)に対し、可視カメラ搭載ドローン(DJI MATRICE 300 RTK、ZENMUSE H20Tカメラなどを使用)を安全かつ正確に飛行させ、アンカーボルトの変形・弛みなどの変状有無の確認のための高精細画像を撮影しました。
成果: 列車運行に支障を来さない遠方からの撮影においても、大型ドローンによる高性能カメラと望遠レンズの組み合わせにより、拡大しても十分鮮明な画像を取得できることが実証されました。これにより、検査員の安全性確保と同時に詳細な目視検査に準ずる情報が得られる可能性が示されました。
可視/赤外線カメラによるトンネル検査(有馬トンネル)
概要: 夜間の限られた時間(12月13日実施)に有馬トンネル内でのドローン飛行(DJI MATRICE 300 RTK、ZENMUSE H20Tカメラなどを使用)を行い、コンクリートのひび割れ(可視カメラ)と浮き(赤外線カメラ)の検出を試みました。
成果: 冬季であれば、トンネル覆工表面の温度は下がるものの、地熱により背面温度が一定に保たれることで温度差が生じ、浮きを検出できる場合があるとの見解が得られました。これにより、軌陸車による検査費用と日数の大幅な削減の可能性が示唆されました。
可視カメラによる天井内調査(地下駅天井内)
概要: 複雑な空調設備や配線・配管、防水パン等が多数配置された地下駅天井内(新開地駅など)において、マイクロドローン(GoPro Hero用Beta85Xなどを使用)を駆使し、当社の有する相当な技能を持つパイロットがほぼ全延長にわたる撮影を可能にしました。
成果: 点検口からの目視だけでは不十分だった天井内の詳細な状況を正確に把握できることが判明し、維持管理の効率化や効果的な改修計画の立案に大きく貢献できる可能性が示されました。
得られた知見と今後の展望
本実証試験を通じて、ドローンを用いた鉄道構造物検査の有効性と課題が明確になりました。
- 太陽光の有無や季節(冬季)によって、赤外線カメラによる浮き検出の精度が変動することが判明
- 反射光や水分など、様々な要素がコンクリート表面の温度変化に影響を与えるため、それが浮きによるものかどうかの見極めに専門的な注意が必要であることを確認
- 大型ドローンによる高所部撮影では、高性能カメラと望遠レンズにより鮮明な画像が得られ、安全性と精度を両立できる可能性が示された
- 地下駅天井内のような極めて困難な環境でも、経験豊富なドローンパイロットの技能が、期待を上回る成果をもたらすことが証明された
これらの知見は、将来の鉄道インフラ維持管理におけるドローン技術の本格的な実用化に向けた貴重な一歩となりました。旭テクノロジーは、今後もドローン技術と高度な運用ノウハウを活かし、安全で効率的なインフラ維持管理に貢献してまいります。
旭テクノロジーでは、DJI、ELIOS、Skydio、マイクロドローンといった様々な機体を運用可能です。建設業としてプラント事業からスタートした長年の経験を活かし、構造物の点検や導入支援を行っています。ドローンの運用だけでなく、データ収集した後の画像処理まで一気通貫で支援が可能です。現場で課題を感じられている方はお気軽にご相談ください。専門家に無料相談してみる⇒