【ニュース】プラントにおけるドローン活用のガイドラインについて
2019年3月29日に総務省消防庁、厚生労働省、経済産業省より、「プラントにおけるドローンの安全な運用方法に関するガイドライン」が公表されました。
このガイドラインでは、こまれで未整備だったドローンによるインフラ点検時での運用方法をとりまとめており、今後のドローン活用の推進が期待されます。
また本ガイドラインでは、プラントにおけるドローンの点検事例なども別途紹介されており、とても参考になります。
今後ドローンビジネスに携わる人は、ぜひ一度、チェックしておくとよいかと思います。
■プラントにおけるドローンの安全な運用方法に関するガイドライン
以下からは、ガイドラインの主な内容の概要です。
プラントにおけるドローン活用のガイドラインの概要
<ガイドラインの目的>
コンビナート等の石油精製、化学工業(石油化学を含む)等のプラントにおいて、ドローンを活用することは、高所点検の容易化、点検頻度の向上による事故の未然防止、災害時の迅速な現場確認等が可能となり、プラントの保安力の向上に繋がると期待されています。
その一方で、防爆エリアへの進入及び設備への落下等を防ぎ、安全な利活用方法を普及させることも求められるため、ドローンの安全な利活用に向けたガイドラインへの取りまとめを行ったとしています。
以下は、ガイドラインにて提唱されている、プラントにおけるドローン点検の体制です。
プラントにおけるドローン活用の体制
・飛行計画立案者
・ドローン運用事業者
・飛行計画承認者
・外部関係機関
これらに分け、飛行目的や航空法申請の許可、事業者選定、飛行計画の作成、点検作業の実施、飛行記録の作成と作業を分けて行っていきます。
通常運転時におけるプラントでのドローン活用方法
①操縦者の要件
基本的な操縦技量と業務遂行のための追加技量を習得している必要がある。
必要に応じて、目視外飛行や人又は物件から 30m 以上の離隔が確保できない飛行、150m以上の高さの飛行を実施できる能力がある操縦者が望ましいとしています。
②飛行計画書の作成と提出
飛行計画立案者は、以下のような内容で飛行計画書を作成し、飛行計画承認者に提出し、承認を受けることが望ましい。
(1)ドローンの飛行目的・計画
→飛行目的、撮影方法、撮影対象、飛行エリアの状態など
→飛行日時や監視人数の検討を行った飛行計画
(2)リスクアセスメント
爆発性雰囲気を生成する可能性があるエリア、及び火気の制限があるエリアへの侵入や落下が生じ、設備破損やバッテリーの破損による発火、引火による大事故が生じる可能性を想定すべく、飛行エリアに基づくリスクアセスメントを実施する。
●爆発性雰囲気を生成する可能性がなく火気の制限がないエリアの危険性
→ドローンの落下等による人的被害、または設備の破損など
【要因】
作業員、通行車両、設備等の上空での飛行、悪天候、強風時での飛行、他の航空機や鳥獣との接触、金属の施設近傍での磁気センサーの乱れ、GPSの不具合、電波の混線、電波干渉など
●爆発性雰囲気を生成する可能性があるエリアの近傍や火気の制限があるエリアの危険性
→同エリアに侵入し、着火など
【要因】
ドローンの不具合による停止、落下、耐風性能を超える風速によって機体が流される、落下等の衝撃によりバッテリーが破損し、着火など
(3)リスク対策
リスクアセスメントの結果をもとに、リスクの対策を行う。
●爆発性雰囲気を生成する可能性がなく火気の制限がないエリア
【リスク対策内容】
関係者へのドローン飛行の実施及び飛行ルートの周知の徹底、監視体制下での実施、悪天候時の作業中止、不具合発生時の危機回避機能(フェールセーフ機能)の作動など
●爆発性雰囲気を生成する可能性があるエリアの近傍や火気の制限があるエリア
【リスク対策内容】
飛行中止条件の設定、非危険エリアでの離着陸、風況、飛行高度等に応じた危険なエリアとの離隔、風速の監視・連絡体制の確保、安全機能を有する機体、高い技術を有する操縦士による操縦の実施、事前のガス検知の実施、防火・消火体制の確保、衝撃等に強いバッテリーの選定など
③事前協議等の実施
飛行計画書をもとに、以下、関係者との情報共有を行う。
(1)社内関係機関との協議と承認
(2)外部関係機関への情報共有
→管轄消防、産業保安監督部、海上保安部、警察署、航空局、自治体及び近隣プラント等と協議、相談または情報共有など
④ドローンを活用した点検等の実施
(1) 飛行前の確認
→飛行ルートに関する周知、実施体制の確認、天候、風速条件、飛行ルート付近の障害物確認、ドローンにおける性能確認、飛行中の中止条件の確認、中止判断者の確認など
(2) 飛行中の状況確認
→飛行中のドローン直下の状況、他の航空機や鳥獣の有無、天候、風速の状況変化、計画通りの飛行状況(高度、緯度・経度)、電波環境の問題の有無など
⑤飛行記録の作成と提出
点検完了時には、点検を行った内容について、以下のような飛行記録を作成することを提唱しています。
(1) 飛行記録
→作成したものは、飛行計画承認者等に提出
(2)知見の共有
→点検時に発生したヒヤリハットや新たな知見、気づきをプラント内で共有する
(3) その他
→その他、必要に応じて活用結果や課題点等をプラント内で共有する
以上が、プラントの通常業務時でのドローン活用の概要です。
ガイドラインにはこれ以外にも、通常時以外の「災害時」でのドローン活用方法や航空法などの「関連法令」についても記載があります。
かなり参考になる「プラントにおけるドローン活用事例集」
次に、ドローンのビジネス面において、よい参考資料となるのが、この「プラントにおけるドローン活用事例集」です。
国内の石油精製、化学工業(石油化学を含む)等のプラント事業者のドローン活用状況を把握するため、41社86事業所がドローン活用におけるアンケート調査の回答を行っています。
回答を行った41社86事業所のうち、16社27事業所はすでに活用実績があり、これまで数回実験したのみの事業所から、実際に月に数回活用している事業所もあり、プラント事業におけるドローン活用の動きを把握することができます。
これからのドローン活用のニーズ
実際に活用を行った27の事業所では、今後もドローンによる活用のニーズがあり、年に数回活用したいということ。
さらに興味深いのは、まだ活用実績がない59の事業所についても、39の事業所では活用ニーズがありということです。
全体では7割以上の事業所でドローン活用のニーズがあるが、実際の実績では3割程度と、まだ実作業レベルにまで踏み込めていない事業所が多くあるのも特徴的です。
ただし今後、他の事業所の動きに合わせて、着実にドローン活用が進んでいくことが予測されます。
実際にドローンで点検を行った箇所
またアンケートでは、プラント内で実際にドローン点検を行った箇所についても確認することができます。
最も多いのはフレア設備、配管、タンクで、今後活用したい箇所については、配管、タンク、塔本体・塔頂配管が多く、次いでフレア設備、塔以外の高所、塔槽内部となっています。
ドローン点検時に注意したポイント
その他、事例集では、実際にドローン点検時に注意したポイントについても記載されています。
ドローン活用時に最も注意した点として挙げられていたのは、監視体制、周囲の危険物施設との距離、立ち入り禁止区域図、操縦者の資格などです。
一方、ドローン活用における懸念点として挙げられたのが、防爆エリアや設備への落下、人への落下といったものが多く、今後の普及の鍵は、いかに落下時等に備えたリスク対策ができるか、が焦点となりそうです。
なお、リスク対策については、ドローン活用を行った実際の事業者による事例紹介にて、より詳細な内容を確認することができますので、こちらも参考にしてみてください。
本ガイドラインは、プラント事業に携わる方以外でも、飛行計画からリスクアセスメント、リスク対策の考え方が非常に細かく明記されているので、とても参考になるはずです。
今後業務でドローンの活用を考えている方は、ぜひ一度、ご一読頂くことをおすすめします。
■プラントにおけるドローンの安全な運用方法に関するガイドライン
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