近年、ドローンはさまざまな用途で使用されており、その1つに橋梁点検があります。このニーズは年々大きくなっています。この記事では、橋梁点検の基本情報から、ドローンを使用した橋梁点検を実施する方法や、メリット・デメリットなどについて解説しています。ドローンの免許取得を検討している人は、参考にしてください。
目次
1.橋梁点検の基本情報
まず、橋梁点検とはどのようなものなのでしょうか。基本情報を、実施する理由と合わせて解説します。
橋梁点検とは
橋梁点検とは、橋の安全性を維持するために実施するものです。交通網としての一翼を担う橋は、利用者や第三者への被害防止、機能不全の回避は重要です。橋の老朽化や劣化を原因とする事故を防ぐために、5年に1度の点検が義務付けられています。
橋梁点検を実施する理由
橋梁点検を実施する理由は、老朽化や劣化による橋の異常を早期に発見し、安全性の維持に必要な措置を判断するためです。橋には車や鉄道など、重量のある物が通過するたびに負荷がかかります。また、風化によって徐々に劣化します。
老朽化・劣化によって損傷すると、重量物に耐えられなくなり、危険な状態になるでしょう。橋の長寿命化を実現するには、点検や補修による予防保全が重要です。
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2.現在ドローンによる橋梁点検が求められている
ドローンを使用した橋梁点検がなぜ求められているのか、現状と効率化が急務であることを通して解説します。
橋梁点検の現状
国土交通省の道路構造物の現状(橋梁)によると、日本には約72万箇所もの定期点検が必要な橋があります。橋梁点検は実施の義務があり、頻度は5年に1度です。72万箇所のうち、約45万箇所を自治体が管理しており、点検費用も自治体が負担しています。自治体によっては、予算が確保できず、計画通りに実施できないこともあるでしょう。
また、点検を実施できる技術者の数が減少しています。高度経済成長期に整備された橋梁も多く、老朽化が進んでいるため整備が欠かせません。点検は重要ですが、点検費用が増加し技術者は減少しています。
参考:Microsoft PowerPoint – 予防保全の取組みv3.pptx
橋梁点検の効率化が急務
技術者の数や費用などの問題から、早急な効率化が求められています。これまでの点検は、橋梁点検車を用いて実施するケースが多くみられますが、橋梁点検車の使用には費用が発生します。さらに、作業中は常に駐車しておくことになるため、交通規制が必要です。
橋梁点検車が使えない橋の場合は、作業員がロープアクセスと呼ばれる命綱を使用して点検するため、費用はもとより、安全性の課題があります。
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3.ドローンを用いた橋梁点検の方法
ドローンを使用した点検には、2つの手順を合わせて実施します。主な方法を解説します。
ドローンで広範囲を点検する
ドローンを使用して橋梁のそれぞれのパーツを撮影し、AIや画像認証技術などによって点検を実施します。点検内容はおもに、ひび割れ点検と浮き点検です。ひび割れ点検では、カメラとAI技術によってひび割れを自動検出できます。
これまでは技術者による手作業での記録が必要だったため、ドローンの導入で大幅に時間と人員を削減できるでしょう。浮き点検では、搭載された赤外線カメラによって部材の浮きを検知できます。浮きが発生している箇所は温度変化が発生するため、赤外線カメラで異常の検知が可能です。
ドローンでの点検結果をもとに作業員が重要箇所を点検する
ドローンと作業員による、それぞれの点検を組み合わせるケースも多くみられます。ひび割れや浮きなど橋梁に問題が見受けられた際は、詳細な点検が必要な箇所を特定し、作業員が点検します。
ドローンは容易に広範囲のチェックが可能ですが、打診検査は不可能なため、改めて作業員によるチェックが必要です。しかし、ドローンでの点検を先に実施することで、技術者がチェックすべき箇所を絞り込めるため、効率化できるでしょう。
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4.ドローンを用いた橋梁点検のメリット
ドローンを使用することで得られる、安全性や時間、精度など6つのメリットについて解説します。
安全性が高い
ドローンを使用した橋梁点検は、安全性が高いことが大きなメリットです。作業員は地上や橋の上など安全な場所から機体を操作し、搭載されたカメラ越しに点検を実施できます。これまでの点検方法では、車両点検車や命綱を使用する必要があるため、天候や不注意などによる落下・怪我の危険性がありました。
時間を短縮できる
ドローンを使用した橋梁点検は、これまでの方法と比較して大幅に時間を短縮できます。ドローンを飛ばし隅々までチェックするだけであるため、準備や安全確保が迅速にできます。また、点検作業も空中から一度に広い範囲を撮影可能です。そのため、短時間で効率的に見られます。点検車や命綱を使用した点検では、準備を含め橋梁ごとに多くの時間を要します。
点検の精度向上につながる
ドローンを使用すると、点検の精度向上につながります。ドローンは小回りがきくため、作業員の目視が難しい場所でもチェックが可能です。高性能なカメラまたは、赤外線カメラを使用することで、人の目では認識できない異常も発見できます。これまでの点検車や命綱での点検では、どうしても手が届かない場所が発生します。
人員削減につながる
ドローンでの点検は、人員の削減にもつながります。ドローンでは操縦者さえいれば、最小限の人数で点検が可能です。橋梁点検車を使用するこれまでの方法は、運転手やオペレーター、作業員などに加え、交通規制の人員も求められます。また、大きな橋梁で点検箇所が多いと、複数の点検車両が必要なケースもあるでしょう。その場合、より多くの人員が必要になります。
コスト削減につながる
ドローンを使用した橋梁点検は、点検にかかるコストの削減が可能です。点検車が不要で、交通規制に必要な費用も抑えられます。これまでの点検は、チェックを実施する技術者のほかに、点検車の運転手や交通規制の整備員などが必要で、それぞれにコストがかかります。10人以上の人員が必要な場合もあり、多くの人件費や交通費が発生することが課題でした。
効率的な点検計画を立てられる
ドローンを使用すると、点検計画を効率的なものにできます。ドローンで撮影した内容にAIを活用することで、データをもとにした点検計画や修理計画に役立ちます。適切な対策をとれれば、橋の寿命を伸ばせるケースもあるでしょう。
5.ドローンを用いた橋梁点検のデメリット
一方で、ドローンを使用することのデメリットも存在します。おもな2つのデメリットを解説します。
天候に左右されやすい
ドローンは風や雨に弱く、強風や降雨の際は飛ばせません。雨風が強い日はもとより、点検途中で強くなった場合は中止しなければなりません。なかでも海の近くは強風が吹きやすく、橋梁点検を実施できる日が限られます。
事前に飛行許可を申請しなければならない
総重量が200gを超えるドローンは航空法の規制対象で、事前に飛行許可の申請が必要です。航空法では「航空機の航行の安全に影響を及ぼすおそれのある空域や、落下した場合に地上の人などに、危害を及ぼすおそれが高い空域でドローンを飛行させる場合は、あらかじめ国土交通大臣の許可を得る必要がある」と定められています。
ただし、申請したものの許可が降りないケースもあります。橋梁の場所によっては飛行禁止区域に該当し、ドローンでの点検が不可能な場合があるためです。
参考:航空:無人航空機の飛行禁止空域と飛行の方法 – 国土交通省
橋梁の状況によっては、従来の点検方法との併用も必要
橋梁の状況によっては、ドローンでの点検だけでなく、これまでの点検方法との併用が必要になります。ドローンによる点検は、カメラを通した目視点検や、赤外線カメラを通して内部の温度を確認する破損調査などを実施できます。
ただし、一般的な点検方法である打診検査は実施できません。打診検査とは、ハンマーや特殊な機械でコンクリート部分を叩き、打音や周波数成分から浮きや剥離、損傷などを調査する方法です。打診が必要な状況であれば、ドローンのみの点検は実施できません。その場合は、従来の方法と組み合わせましょう。
6.まとめ
ドローンを使用した橋梁点検は需要が増加しています。日本には約72万箇所もの橋があり、予算や技術者の不足で効率化が急務なためです。また、安全性が高く、時間を短縮できるメリットもあります。
旭テクノロジーでは、プラント事業からスタートした長年の経験を活かし、法人へのドローン導入支援や、構造物の点検サービスを行っています。現場で課題を感じられている方は、お気軽にご相談ください。