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2020.06.19

2021.01.07

農薬散布だけではない!ドローンを使った農業分野の新技術とは

農薬散布だけではない!ドローンを使った農業分野の新技術とは

農業用ドローンと聞くと、農薬散布がすぐに頭に思い浮かぶ方が多いのではないでしょうか。実は農業用ドローンには、農薬散布以外にも様々な活用が期待されており、すでに技術として確立されているものも存在します。

今回は、農業用ドローンに期待される7つの利用分野をテーマに、分野ごとの概要と事例を解説。農薬散布だけではない農業用ドローンの活用方法についてご紹介します。

 

 

農業用ドローンの活用が期待される分野とは?

農業分野にドローンが導入されて以来、ドローンの利用数は急激に拡大してきました。そんな中、2019年3月には、農林水産省がさらなる農業用ドローンの普及を目指して、「農業用ドローン普及計画」を策定しました。

関連記事:「農業用ドローンの規制緩和で何が変わった?ドローンの飛行申請の方法や補助者なし飛行について解説【2020年最新版】」>>

“2022年度までに農業用ドローンを、水田を中心とした土地利用型農業の作付面積の半分以上に普及させるほか、野菜や果樹、中山間地域における先進的な経営体へ導入する”という目標のもと、策定された本計画。計画の中には、農業用ドローンの活用が特に期待される利用分野として、7つの分野を設定しています。
ここからは7つの分野のそれぞれの概要と事例をご紹介します。

ドローンを使用した農薬散布

これまで主に無人ヘリコプターによって実施されてきた農薬の空中散布を、ドローンを使って行うというものです。ドローンは無人ヘリコプターと比較して扱いやすく、価格も安いため、労働負担の軽減や、作業性の向上、コスト削減効果が期待できます。

また、センシング技術と組み合わせて、病虫害が発生した箇所にピンポイントで散布を行えるようにするなど、より効率的な防除や収量・品質の向上も期待されています。
なお計画策定時点では、2022年までにドローンによる散布面積を100万ha(2018年時点で約2万7000ha)まで拡大することを目標に掲げています。

複数のドローンを自動航行で行う農薬散布

農業用ドローンの活用方法として最もポピュラーな農薬散布は、事例も数多く存在し、細かいものをあげれば紹介しきれないほどです。現在では、散布代行事業をサービスにした企業も多数登場しており、ドローンによる農薬散布は拡大の一途を辿っています。
ここでは注目すべき、ある実証実験をご紹介します。

2019年7月、茨城県龍ケ崎市の横田農場にて、ドローンメーカー「DJI JAPAN」と、アグリビジネス企業「シンジェンタジャパン」が協力し、ドローンを使った新しい形の農薬散布を披露しました。

使用されたドローンはDJI製の「AGRASMG-1P RTK」が2機。1機は田んぼの東南の角から、もう1機は田んぼの東側中央から農薬散布をスタート。1枚の田んぼの北半分と、南半分を2機で分担し、それぞれが4メートルの幅で除草剤をまきながら往復。8.4反(84アール)あった田んぼの散布作業はわずか5分で終了しました。

この農薬散布で注目すべきはそのスピードもさることながら、2機のドローンが自動航行による編隊飛行を行ったという点にあります。
デモンストレーションに参加したDJI JAPAN代表の呉氏は「複数台、同時に自動で散布を行うことが、ドローンを使った空中散布のあるべき姿」と強調しました。実際に「AGRASMG-1P RTK」は最大5機まで自動編隊飛行でき、ドローンによる農薬散布の進化を強く感じさせることとなりました。

参考:「【スマート農業×ドローン】2機同時の自動航行で短時間で農薬散布──DJI×シンジェンタ実証実験レポート」>>

 

ドローンを使った肥料散布

従来は衛星画像とブロードキャスターを組み合わせて行ってきた局所施肥技術を、農業用ドローンを使って行うというものです。
ドローンを使うことで、より精密な作業が可能になるだけでなく、中山間地域のような不整型な圃場においても、労働負担の軽減や、作業性の向上、コスト削減効果が期待できます。

また、農薬散布と同様、センシングを活用した技術の進歩によって、必要最小限の肥料で効率よく散布を行えるようになり、収穫量と品質の向上も期待されています。

 

農薬と共に省力化が期待される肥料散布

肥料散布に使用されるドローンは、基本的に農薬散布用に使用するドローンと同じ機体が用いられ、粒剤用のタンクに付け替えることで肥料散布が可能になります。

農薬散布の事例が目立ちますが、農薬散布の進化=肥料散布の進化であるため、こちらの分野も目覚ましい発展を遂げていると言えます。

 

ドローンを使用した播種(種まき)

ドローンに搭載した散布装置を使って鉄コーティング種子などの散播を行うというものです。これまでは空中からの播種は無人ヘリコプターを利用して行われていましたが、ドローンを使うことで、コストを大幅に抑えつつ、労力の削減が実現可能になると考えられています。

また、一般的な播種で使用される湛水直播機では難しかった、中山間地域の作業においても、ドローンを使うことで容易かつ短時間で播種が行えるようになるため、省力化に大きく寄与しています。

 

試験が実施されているお米の播種

ドローンによる播種はまだ一般化しておらず、多くは試験段階にあります。
積極的に試験が行われているのは米の播種で、大分県日田市、広島県東広島市、福岡県楢葉町など、全国様々な場所で試験が実施されています。

ドローンによる米の播種だけでなく、栽培から販売まで行ったことで話題になったのが、北海道旭川市にある「一般社団法人シンプルライフ協会」です。
同協会は、同じ旭川市の「市川農場」と「北海道農業研究所」と共同開発した新品種の米「N.330(仮)」を、ドローンを使って播種し栽培。その後、収穫物のサンプル出荷(販売)を行い、ドローンによる播種の存在をより身近なものにしました。

農場では1000m2の水田にドローンで種を散布し栽培したところ、他の田んぼと変わらない収穫高があったそうです。

参考:PRTIMESより>>

 

ドローンを使った農作物の受粉

ドローンに搭載した散布装置から、花粉を混合した溶液の散布を行うというものです。リンゴやナシなどの自家不和合性※が強い品種においては、安定した生産のため、人工授粉が欠かせませんでしたが、作業時間と労力がかかることが問題となっていました。これらの作業をドローンで行うことで、省力化できるものと期待されています。
※正常に発育した花粉が同じ個体の正常な柱頭に受粉しても受精に至らないこと

 

ドローンを使ってリンゴの受粉を試験

ドローンを使った受粉は全国的に試験が行われている最中です。
ここでは岩手県紫波郡紫波町で、長年地域の農業を支えてきた「マルショウ紫波」が行っている試験の様子を紹介します。

これまでのリンゴの受粉作業は、中心花にダチョウの羽を使って花粉をつけるのが一般的でした。受粉作業は晴れた日に中心花が満開かつ濡れていないタイミングに行う必要があるなど条件が厳しく、生産者にとっても負担の大きいものでした。
そんな中、「マルショウ紫波」は地元の東長岡果樹生産組合に対して、リンゴの受粉作業にドローンを活用することを提案。組合の了承を経て、3年間の実証実験を開始しました。

初年度となる2018年5月の実証実験では、「サンふじ」約100本に対して空中散布。手作業と同じく、晴れた日に中心花が乾いた状態での作業を行いました。以前は4人で1時間以上かかっていた受粉作業でしたが、ドローンを使用するとわずか15分で終了。その後の生育を観測したところ、花の向きにかかわらず均等に受粉ができており、手作業と比べても収穫量も品質もやや上回る結果となりました。

翌2019年には同じ圃場で2度目のドローン受粉を実施。1度目と条件を変えて、中心花が濡れた状態での実施となりました。散布から2ヶ月後に観測したところ、受粉率・結実数共に問題なしとの結果がでました。実証実験は2020年を最終年としており、1年目と2年目とは違うタイプの溶液での散布も計画しているとのことです。

参考:マイナビ農業より>>

 

ドローンを使用して農産物等を運搬

高齢化や担い手の不足など、労働力不足が顕在化している農業の現場において、圃場から集荷場所(施設)への収穫物の運搬作業は、作業者を必ず設置する必要があり、また体力的な負担が非常に大きいことが、大きな課題となっていました。

そこでドローンにコンテナを取り付けるなどして、圃場と集荷場と往復させることで、野菜や果樹などの収穫物や、農業資材の運搬における省力化を目指しています。

 

大型ドローンで物資を運搬

農業用ドローンの活用が期待される分野の一つでありながらも、現時点では一般的に利用できる技術としては確立されていないのが農産物等運搬です。

農産物の運搬には、収穫物をたくさん乗せるための最大積載量や、長距離飛行のためのバッテリーなど、運搬に特化した性能が求められることもあり、メーカー各社が時間をかけて開発・実証を重ねている段階にあると見られます。

農業以外の分野で見れば、国内メーカー「サイトテック」の大型ドローン「KATANA1750」が、20kg以上の物資を目視外自律飛行で往復2kg運搬することに成功していたり、同じく国内メーカー「マゼックス」が林業用ウインチによる吊り下げ運搬により、1台で人間8人分の作業スピードで苗木の運搬を可能にした「森飛-morito-」を開発するなど、ドローンの“物を運ぶ性能”の進化は目を見張るものがあります。

また、海外に目を向けると、農業用ドローンでありながら最大積載量200kg の機体も登場していることから、国内メーカーからも運搬に特化した農業用ドローンが登場する日は近いと思われます。

参考:PRTIMESより>>

 

空撮して行う圃場センシング

カメラを搭載したドローンで圃場を空撮し、画像の分析を行うことによって、農作物の生育状況や、病害虫の発生箇所の可視化を行うものです。リモートセンシングとも呼ばれ、これまでは人工衛星を使って行ってきましたが、ドローンを活用することで、これまでと比べて容易に情報を取得できるようになり、適切な防除や追肥、収穫による品質・収量の向上に期待できるようになります。また、これまで目視で行ってきた圃場の見回りなどに要する時間も大幅削減にも期待できます。

 

空撮画像から農作物の状態をセンシング

従来の圃場センシング は人工衛星で撮影した画像をもとに行われてきました。しかし人工衛星による撮影は、雲の影響を受けやすく、頻繁な撮影も困難、さらに高精度化にも問題を抱えていました。

そんな中、DJIから発表されたドローン「P4 Multispectral」は、人工衛星の役目に代わる存在として注目を集めました。
フルカラーカメラ1台に加え、ブルー・グリーン・レッド・レッドエッジ・近赤外線の帯域の5台のマルチスペクトルカメラアレイを搭載した「P4 Multispectral」は、人工衛星の弱点である雲を気にすることなく撮影でき、逐次バッテリー交換を必要としながらも、1日100haをセンシングできる飛行能力を持ちます。

「P4 Multispectral」で記録したデータを、正規化植生指標(NDVI)を軸にして見ることで、作物の生育状況、食味判断、収穫時期、さらに雑草の多寡、害虫被害、土壌の状態も測定可能になります。しかも人工衛星では実現不可能だった、センチ単位という高精度です。

参考:DJI>>

 

圃場センシングの技術は進化を続けており、さまざまなサービスが誕生しています。
スカイマティックス社が提供する葉色解析サービス「いろは」は、ドローンで空撮した写真をWebにアップするだけで、農作物の生育状況を見える化するサービスです。

写真の自動解析によって、農作物の生育状況や雑草・害虫による問題などを簡単に判別することができ、アップロードされたデータは、農場経営者や従業員とすぐに共有できるので共同管理にも最適です。

 

葉色解析サービス「いろは」の特徴としては、市販のドローンを使ってすぐに始められることです。
「Phantom(ファントム)」、「Mavic(マビック)」、「Inspire(インスパイア)」シリーズなどが使用可能なので、葉色解析用にドローンを購入する必要はありません。

 

ドローンを使った鳥獣被害対策

農作業の現場において鳥獣による農作物への被害が深刻になっています。農林水産省の資料※に、よると年間474,200t、金額にして164億円の農作物が、野生動物の食害で消えています。

そのような被害を少しでも減らすために、ドローンを使って対策することが本分野の目的です。赤外線カメラを搭載したドローンで空撮を行うことで、農場に被害を与える鳥獣の生息実態を把握するほか、ドローンによる撮影をリアルタイムで通信して捕獲現場の見回りを行うことによって、労働負担の軽減や、捕獲作業の効率化などを目指します。
※全国の野生鳥獣による農作物被害状況について(2017年)

 

鳥獣被害の調査で大活躍

鳥獣被害対策におけるドローンの運用は徐々に普及しつつあり、北海道、群馬県、栃木県などでは、ドローンに搭載した赤外線カメラでの撮影により、シカやイノシシの生息域や生息数を調査する企業サービスなども登場しています。

ここでは神奈川県にある「かながわ鳥獣被害対策支援センター」の事例を紹介します。

鳥獣被害対策は、鳥獣による被害や痕跡、耕作地の作付け、集落のヤブ、樹林地、電気柵などの防護対策、わなの設置状況などを調査・確認するところから始まりますが、従来の調査は、実際に人間が現地を歩き、一つ一つ目視しながら地図上に書き込んでいくという、非常に時間と労力のかかるものでした。そこで、同センターでは、人間の踏査に代わって、ドローンを使った調査を行うことで、大幅な負担軽減効果を上げることに成功しました。

これまで約3haの農地の調査に、現地踏査4時間、地図化作業4時間の合計8時間程度かかっていたところを、ドローンで調査することで、空撮に10分程度、画像結合ソフトやアプリを使った地域全体の撮影画像の作成を2時間程度で終わらせることができたのです。

参考:神奈川県>>

 

進化し続ける農業用ドローンの新技術

農業用ドローンに期待される7つの利用分野をテーマに、農薬散布だけではない農業用ドローンの活用方法についてご紹介しました。現状ではまだ実証段階にあり、一般化されていない技術もありますが、農業用ドローンの活用法は今後ますます拡大すると考えられます。

旭テクノロジーが運営するドローンスクールでは、ドローンを使って農薬散布を行いたい方向けの「EA2020農業コース」や、ドローンを使った圃場センシングサービスを学ぶ【「いろは」の認定オペレーター育成講座】など、農業分野でドローンを活用したい方向けの講座を開講中です。

実際にドローンでの農薬散布を行っているインストラクターが少人数で指導を行い、農薬散布の操縦技術はもちろん、現場までの機体の搬送や点検方法などの細かい部分まで、より実践に近い技術を習得することができます。

「EA2020」など農業用ドローンの機体販売と購入後のサポートも行っていますので、これからドローンで農薬散布される方も安心です。

ドローンを導入して農業の省力化を図りたい、スマート農業に興味があるという方は、ぜひドローンスクールにお問い合わせください。

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