近年はドローンが普及し、社会のさまざまな分野で活用されています。ドローンが活用されている分野の1つが外壁調査です。この記事では、ドローンの外壁調査の基本情報やニーズ、活用できる資格などを解説します。ドローンの技術を活用した外壁調査に興味のある人は、参考にしてください。
目次
外壁調査とは
外壁調査とは、建物の外壁の状態から安全性に問題がないかを確認する検査のことです。建築基準法第12条において、外壁調査が義務付けられています。
外壁調査は、特定建築物定期調査(1~3年毎)と、全面打診等調査(10年毎)の2つに区分されます。特定建築物定期調査は、手の届く範囲に異常が見られたときに実施され、全面打診等調査は、竣工・外壁改修後10年を経過した場合に義務付けられています。
ドローンでの外壁調査とは
近年浸透したドローンは、外壁調査においても活用されています。ドローンが使用される以前は、テストハンマーと呼ばれる道具で実際に外壁を叩く「打診調査」が一般的な方法でした。
打診調査では音で劣化の状態を判断するとともに、目視や触診も合わせて実施していました。打診調査は精度は高いものの、多くの時間や手間を要することがデメリットです。ドローンを使用した外壁調査にはおもに2つの種類があるため、以下で解説します。
1.可視光点検
可視光点検では、ドローンに標準搭載されたカメラで外壁の状況を確認します。外壁のひびや損傷、塗装の劣化などの把握が可能です。人間には直接見ることが難しい場所でも、空を飛ぶドローンであれば見て確認できます。
2.赤外線点検
赤外線点検では、ドローンに搭載された赤外線サーモグラフィーで、外壁の浮きや漏水部分を確認します。建物の外壁に浮きがあると浮いた部分の下に空気の層ができ、問題のない部分と比較して温度が高くなります。
そのため、赤外線カメラを使用すると、問題のある場所を可視化できます。外壁から放射される熱エネルギーをカメラを用いて感知する方法のため、外壁が損傷する恐れはありません。
ドローンの外壁調査に活用できる資格
ドローンを用いた外壁調査に資格保有の義務はありませんが、あると信用が増し有利になるでしょう。おもな3つを解説します。
赤外線建物診断技能士
赤外線建物診断技能師とは、赤外線サーモグラフィーを用いて建物を診断でき、改修箇所や改修方法をアドバイスできる資格です。ドローンを活用した外壁調査の際に、知識と技術で適切なアドバイスが可能です。国家資格ではありませんが、自治体の案件では、赤外線建物診断技能師が受注の条件となっているケースが多くみられます。
第3級陸上特殊無線技士
第3級陸上特殊無線技士とは、総務省が定める国家資格です。5.7GHz帯の周波数の電波を扱うために必要な資格です。大型の産業用ドローンには5.7GHz帯の電波を使用する機体があり、大規模なインフラの点検には大型の機体が適しています。
5.7GHz帯を使用する機体であれば、メンテナンスで電源を入れるだけでも、第3級陸上特殊無線技士の資格が必要です。所持していると、仕事の幅が広がる可能性があります。
ドローンの操縦にまつわる資格
ドローンで外壁調査を実施する際は、操縦の技量が重要です。街中の建物を点検する際は事故に繋がるリスクが大きいため、客観的に操縦技術を証明できなければ仕事の受注は難しくなります。
ドローンにまつわる資格は国家資格と民間資格があり、実用性が高く知名度のある資格を有していると信頼を得られ、仕事に繋がりやすくなるでしょう。国家資格には「一等無人航空機操縦士」と「二等無人航空機操縦士」があります。おもな民間資格としては「JUIDA認定資格」や「DPA認定資格」、「DJI CAMP認定資格」などが挙げられます。
ドローンでの外壁調査のニーズ
ドローンでの外壁調査のニーズは、年々拡大しています。ドローンを用いた点検の市場規模は2016年度はわずか2億円でしたが、2024年には1,473億円にまで増加すると予想されています。また、2022年4月には、ドローンでの赤外線点検が、定期調査報告制度の外壁調査方法として正式に認められました。
日本国内の大規模インフラの多くは老朽化が進んでおり、ドローンを用いると費用と危険性の問題を解消できるため注目されています。一方で、ドローンの資格を取得するには多くの時間と費用がかかるため、従業員に資格取得を促す企業はあまりなく、取得できれば競合相手も少ないというメリットもあります。
※参考:ドローンビジネス調査報告書2019 | インプレス総合研究所
ドローンでの外壁調査のメリット
従来の打診調査と比較して、ドローンを外壁調査に用いることにどのようなメリットがあるのでしょうか。おもな5つを解説します。
外壁調査のコストを抑えられる
ドローンを用いた外壁調査では、コストを抑えられます。従来の外壁調査では点検時に足場やゴンドラが必要で、建物が高層であるほど足場のコストがかかっていました。ドローンであれば足場やゴンドラなどの仮設設備が不要なため、コストを下げられます。
調査にかかる時間を短縮できる
ドローンを用いた外壁調査では、コストだけでなく時間も減らせます。従来の打診調査では、建物の大きさによっては半月から1か月ほどかかっていました。ドローンであれば足場を組み立てる時間が不要になるため、早ければ1日もかからずに終了することもあります。撮影したものを解析する必要はありますが、それを含めても時間の短縮になります。
安全性が高まる
ドローンを用いると、従来の調査と比較して作業者の安全性が高まります。従来は作業員が高所の足場に乗って点検作業をする必要があり、対策をしていても転落事故や怪我のリスクがありました。ドローンであれば、ドローンが墜落する可能性は多少あるものの、適切な運用さえすれば事故のリスクはほとんどありません。
外壁を損傷させるリスクがない
ドローンの外壁調査は外壁に直接触れる必要がないため、外壁を損傷させるリスクがありません。従来の打診調査は、劣化が進んだ外壁であれば、調査の際に外壁の一部が剥がれる可能性がありました。また、足場を組み立てる際に固定用のアンカーを打ち込むため、外壁に穴を開けることもあります。
目視では確認できない場所を調査できる
ドローンを用いると、従来の方法では調査できなかった場所も見られます。高所はもちろん、人が入れない狭い隙間の調査が可能です。また、赤外線点検であれば、目視で分からない外壁の内側の状況を把握できます。従来の方法と比較して調査の範囲が広がるうえ、画像としてデータの保存も可能です。
ドローンでの外壁調査のデメリット
外壁調査にドローンを用いることでコストや時間の削減に繋がる一方で、デメリットも存在します。おもな4つを解説します。
調査が天候に左右される
ドローンはプロペラで飛ぶため、風には弱く影響を受けやすいでしょう。精密機械であるため雨天に弱く、天候に左右されやすく、調査できないケースが発生します。また、赤外線点検の場合は日照や気温の影響を受けやすいため、壁面がほどほどに温まったタイミングに作業を実施する必要があります。
あらかじめ、予備日を設定しておくと安心です。また、ドローンの種類によっては多少の雨風であれば飛行できるため、事前に確認しておきましょう。
分析力が不足していた場合トラブルになる得る
企業の分析力によっては、実際に発生している不具合と乖離してしまい、トラブルになるケースがあります。赤外線点検であれば、ドローンや赤外線の知識に加え、建築物の知識も必要になります。写真を撮影するだけでなく、正確な解析を実施するための知見や能力が必要です。
実態と異なる報告書になる恐れがある
赤外線点検は温度差をみますが、外壁の劣化だけでなく建物の構造や環境、外壁の材質などでも温度変化が発生します。赤外線点検では、温度差が発生する要因を多角的に計算して解析することが重要です。解析を誤ると、実際には外壁の劣化がないにも関わらず、補修が必要と報告書に記載してしまうことになります。
場所によってはドローンを使用できない
建物が建つエリアによっては、ドローンを使用できないケースがあります。住宅街や商業エリアの多くは事前にドローンの飛行許可を得る必要があり、外壁調査を実施する前に確認しなければなりません。
ドローンの飛行が規制されていないエリアであっても、周囲の建物と間隔が狭く、調査できないこともあります。航空法の規制や条例などに配慮して、作業を進めなければなりません。
資格を取得するにはドローンスクールがおすすめ
ドローンにまつわる資格を取得するには、ドローンスクールの受講がおすすめです。操縦技能を身に付けられるとともに、講習を受講することで知識を付けて合格の可能性を上げられます。独学で専門的な技能を向上させるのは、難易度が高いでしょう。スクールであれば費用はかかりますが、効率的に合格を目指せます。
まとめ
ドローンを用いた外壁調査は、従来の打診調査と比較してコストや時間を削減でき、安全性も高められるためニーズが高まっています。ただし、分析力・解析力がなければ、誤った結果を出す恐れもあります。知識やスキルを客観的に証明するには、資格の取得がおすすめです。
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