ドローンに関する国家資格の導入や資格制度の重要性を理解することは、今後のドローン業界での活動において非常に重要です。特に、2022年から始まった操縦ライセンス制度は、これまでの民間資格だけでは対応しきれない領域に対して新たな基準を設け、安全性や効率化を追求しています。
ドローンを活用した物流やインフラ点検、さらには都市部での様々な用途におけるドローンの飛行が進む中で、国家資格の取得はますます重要な課題となってきました。今後のドローン操縦者には、どのようなスキルや知識が求められるのか、この記事を通して一緒に確認していきましょう。
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目次
7.第17回小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会で決定されたこととは?
9.免許制度ができると民間のドローンスクールはどうなるのか?
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1.無人航空機レベル4とは?
出典:国土交通省HP
首相官邸の小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会により、空の産業革命に向けたロードマップが示されており、こちらは空の産業革命を実現させるための指針です。
空の産業革命に向けたロードマップ2020では、無人航空機レベル4を実現させるための新たな制度が目玉として盛り込まれました。(上記画像はロードマップ2021)
レベル4とは補助者なし、操縦者の目視なしで、有人地帯の第3者の上空にドローンを飛ばすことです。
例えば、北海道の札幌市の第3者の上空の人口集中地区を飛行しているドローンがあり、そのパイロットは沖縄からLTEを使ってドローンを操縦しているなどがレベル4に当てはまります。
レベル4とはこのように従来の航空法では考えられない飛行方法を行うことを指しています。
人が多いエリアでのドローンによる配送、都市部でのインフラ点検などを実現させるためにレベル4の目標が設定されましたが、空の産業革命に向けたロードマップ2020で示された取り組みの中で要注目なのが、ドローンの操縦ライセンスと機体登録です。
2.ドローンの民間資格とドローンスクール
2015年とかなり早い時期に民間のドローンスクールが誕生しており、ドローンを学ぶための環境は現時点でも整っています。
ドローンの資格もすでに存在していますがあくまで民間資格であり、資格を取得しなくても非常に厳しい条件をクリアすればドローンを使って仕事をすることは可能でした。
しかし、レベル4実現のために2022年よりドローンの操縦ライセンス制度がスタートする予定で、こちらは国が発行する国家資格です。
技術や知識が厳格に審査されるため、ドローンに関する事故を減らす効果が期待できます。
また測量や輸送のビジネスにドローンを活用する際、これまで不可能だった有人地帯において第3者上空の目視外飛行が可能になります。
少子高齢化や人口減少によって労働力が不足している日本にとっては、労働力を補う重要な役割を果たすことが期待されています。
自由にドローンを飛行できる場所はさほど多くはなく飛行禁止空域と呼ばれるエリアでドローンを飛行させるためには、地方航空局もしくは地方航空局の出先機関である空港事務所に申請し許可承認を得なければいけません。
ドローンの飛行実績、安全確保についての審査をパスしないと許可は下りず、現状でも十分に厳しい審査が行われているわけです。
しかし、厳しい審査による手続きの遅れは、ドローンを普及させる上での足かせとなりかねません。
当面は離島、山間部といったエリアでレベル4の実証実験が行われる予定ですが、このような人口の少ないエリアならともかく、人口が多いエリアで本格的にドローンを活用するのであれば、
既存のシステムだと審査の件数も膨れ上がることが予想されるため、都度の審査では対応しきれないでしょう。
3. ドローンの免許制度とは?
ドローンの免許制度は2022年の12月からはじまるとされており、安全性を保ち、かつ手続きの簡略化を進めるための制度で運転免許のドローン版のようなものと考えてください。
もっとも、既存の審査システムがすぐに消えるわけではなく、国交省にドローンの飛行申請を行い許可・承認を取得すれば、操縦ライセンスなしでも問題はありません。
しかし、仕事や趣味としてドローンに本格的に取り組みたい場合や仕事や業務としてドローンを扱ったり、飛行申請の手続きの煩雑さを避けたい場合は、操縦ライセンスを取得するとよいでしょう。
また国家資格となるため仕事や業務においては信頼を得ることができます。
4.一等無人航空機操縦士と二等無人航空機操縦士の2つの免許制度
現在のところ、操縦ライセンスは一等無人航空機操縦士と二等無人航空機操縦士の2つが作られる予定で、レベル4のように補助者なし、目視外飛行の状態で、第3者の上空にてドローンを飛ばすためには、一等無人航空機操縦士が必要となる予定です。
二等無人航空機操縦士は現状のレベル1からレベル3の飛行に相当し、レベル4以外の場面であれば二等無人航空機操縦士で対応できます。
操縦ライセンスは運転免許と同様に取得したらずっと有効なわけではなく、3年ごとに更新が必要となる予定です。
ここまで国家資格には2つのライセンスがあることをお伝えしました。
実は自動車の運転免許に大型免許や中型免許などがあるように、ドローンの運転免許も操縦する機体の重量や形によって区分される予定です。
ここからは免許制度の区分と限定項目についてご紹介します。
5.免許制度の3つの区分と3つの限定項目
操縦ライセンスは、飛行させる機体によって3つに区分される予定です。
- 回転翼航空機「マルチローター」
- 回転翼航空機「ヘリコプター」
- 飛行機
自動車の運転免許では大型車や中型車、普通車、原付などに区分されています。ドローンの免許でも所有している免許によって操縦できる機体が変わってきます。
既存の民間資格は飛行させる機体によって区分はされていませんが、国家資格になるにあたり機体の区分が制度化される予定です。
また垂直離陸機、いわゆるVTOLを操縦するためには、回転翼航空機「マルチローター」と飛行機の2つが必要とされています。
3つの限定項目
これに加えて限定項目があります。限定項目とは、自動車の運転免許でいうAT限定のようなものとお考えください。
既存の民間資格では書類審査を簡略化できる項目として9つの項目が設定されていますが、今回制度化される国家資格では以下の3つが限定項目とされています。
- 25kg以上の機体
- 夜間飛行
- 目視外飛行
例えば25kg以上のドローンで「第3者上空の目視外飛行」を行いたい場合は「一等無人航空機操縦士が取得でき、【25kg未満の機体の操縦に限る】【目視内飛行に限る】項目を解除できる国家資格の講習をうけて合格」する必要があります。
夜間飛行や目視外飛行は、既存の民間資格でも飛行形態とされています。
国家資格になるにあたり夜間飛行や目視外飛行は限定項目のため制限がかかっており、これらの飛行形態でドローンを飛行させるには、夜間や目視外でドローンを操縦する訓練を受ける必要があります。
以上のように3つの限定項目のうち、2つは飛行形態です。
ではなぜ25kg以上の機体が限定項目に入っているのでしょうか?
なぜ25kg以上の機体は制限がかかっているのか?
諸説ありますが2022年の12月からはじまる免許制度において25kg以上の機体に制限がかかっているのは農林水産航空協会の名残と考えてよいでしょう。
日本において無人ヘリでの農薬散布がはじまったころ、農薬散布の制度化を行ったり認可を行う団体として農林水産航空協会が設立されました。
ドローンが普及してきて農薬散布が行われるようになった頃にも、農林水産航空協会が化や認可を行う形となりました。
当時はまだ大型の農薬散布ドローンは日本に存在しませんでした。
しかし安全のため25kg以上の農薬散布ドローンと25kg未満の農薬散布ドローンで基準が分けられたのです。
具体的には25kg以上のドローンには安全のため、バッテリーを消失したときのフェールセーフやシステムの冗長化、長期間の運用に耐えられる設計や構造が求められ、かなり基準が高くなりました。
このように機体の重量が25kgが1つの基準になりました。
余談になりますが、編集部では約40kg程度の農薬散布ドローンEA2020の認可を農林水産航空協会に求めたところ、国交省へ案内されたことがあります。
6.免許取得までの流れ
一等無人航空機操縦士と二等無人航空機操縦士のいずれを選ぶにしろ、国が認定したドローンスクール(登録講習機関)で講習を受け修了審査に合格し、指定試験機関で学科試験や身体検査を受ける流れが基本です。
操縦ライセンス取得のためには学科試験と実地試験の2つをクリアする必要があるため、学力と操縦技術の両方が欠かせません。
そして、試験で使用する機体と手持ちの機体には差があるため、その差を埋めるための講習も必要です。講習や試験で使用される機体については登録講習機関が決定し国交省に提出する形となっています。
7.小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会で決定されたこととは?
出典:国土交通省HP
2022年4月20日にドローンの環境整備を行うための官民協議会が開催されました。
2021年6月から1年近く開催されておらず、免許の試験や取得する方法について様々な情報が開示されています。
その中から免許の取得に関係することを3つ紹介します。
- 免許の試験は、国が指定する試験機関が実施
- 国の登録を受けたドローンスクールの講習を修了した場合は実地試験を免除
- 免許を取得する方法は2つある
それぞれ順番に解説していきます。
試験は国が指定する試験機関が実施
ドローンの免許制において、最終試験は国の指定機関が担当することが明確化されました。
私たちが車の免許を取得する際に、最終試験のため運転免許センターに通う必要がありますが、ドローンの免許制においても同じような仕組みになりそうです。
また試験機関は全国で1法人と定められています。
国の登録を受けたドローンスクールの講習を修了した場合は実地試験を免除
民間のドローンスクールの講習を受講し修了審査に合格すると最終試験の際、実地試験を免除されることとなりました。
実地試験とは簡単にいうと実技試験のことで運転免許センターでの本免許試験と同じものと考えてよいでしょう。
ただし学科試験は国の指定機関で試験を行う必要があります。学科試験はパソコンを使用するもので3つの中から答えを選ぶ選択式で、一等無人航空機操縦士は70問、二等無人航空機操縦士は50問程度が予定されています。
試験科目は操縦者の行動規範、関連規則、運航、安全管理体制、限定に係る知識などとされており、既存の民間資格で学ぶ内容と同じものとなっています。
しかし一等、二等と明確に区分されているため一等は高難易度の問題が予想されます。
一等ライセンスの学科試験サンプルは今後公表予定とされています。
これまで解説したように、ドローンの国家資格では2つのライセンスと3つの区分、3つの限定項目があります。
- 一等と二等のどちらのライセンスを取得するか?
- どの機体を飛行させるか?
- どの限定項目を解除するか?
どれを選択するかにより学科や実技の内容、時間は変わってきます。
自動車の運転免許を取得するとき、全くの初心者の場合50時間以上の講習が必要です。
ドローンの国家資格も同等以上の講習時間が必要かもしれません。
一方ですでに国交省認定の民間資格を所有している方は卒業試験を受けるまでの学科と実技の時間を短縮する方向で調整されています。
免許の取得を目指している方は今のうちに民間のドローンスクールを受講し、学科と実技を学んでおくのがよいでしょう。
免許を取得する方法は2つある
免許を取得する方法は以下の2つがあります。
- 民間のドローンスクールを受講し修了審査に合格後、国が指定する試験機関で身体検査、学科試験をうける
- 直接、国が指定する試験機関で身体検査、学科試験、実地試験、口頭試問をうける
1の方法は車の免許を取得する際に、自動車教習所で実技試験を行い合格した後、運転免許センターで最終試験(学科試験)をうけるする流れと同様です。
民間のドローンスクールの修了試験に合格できないと最終試験を受験できないため、学科や実技に不安のある人におすすめです。
車の運転免許は新規に免許を取得する人の95%が民間の自動車教習所の卒業生となっているため、ドローンの免許制でもほとんどの方が民間のドローンスクールを卒業する形となるでしょう。
直接、国が指定する試験機関で試験を受ける方法はコストが抑えられます。
しかし、操縦技能や学科の知識をどこでどの程度まで取得するのかの判断が難しいところです。
一度免許を取得した人が再度免許を取得する場合に利用されるケースが想定されます。
運転免許でもクランクなどの実技試験で苦戦する人が多いように、操縦ライセンスの実地試験で苦戦する人も出てくるはずです。
視力があまりよくない人、年齢が高めの人はドローンの実技で苦戦しやすいので、実技に不安を抱えているならドローンスクールをうまく活用したいところです。
どちらの場合でも身体検査は必須となっています。ドローンを操縦するのに必要な視力や運動能力などが検査される予定です。
また二等無人航空機操縦士であれば、車の運転免許などの提出で身体検査を免除することが検討されています。
以上を踏まえて2023年の早期に一等無人航空機操縦士の学科と実技試験を行うことが目標にされています。
8.免許制度がはじまるとドローンの民間資格はどうなるのか?
すでに述べたようにレベル4の飛行を実現するために免許制度が策定されます。
一方で既存の民間資格はどうなるのでしょうか?
結論からいうと、民間のライセンス制度と国のライセンス制度は共存する予定です。
ドローンスクールに通って民間のライセンスを取得している場合、国の操縦ライセンスの学科試験、実地試験の一部、もしくは全ての免除が行われる予定です。
なぜなら国として免許の取得を推進させたいからです。したがって民間のライセンスを取得することは無駄にはなりません。
現在の飛行許可・承認制度とバランスをとるため2022年7月までに民間のライセンス保有者などの経験者向けの講習要件を策定し二等無人航空機操縦士の取得を進めていく予定です。
国家資格になるにあたり、従来よりも多い飛行時間や知識が必要になるかもしれません。
車の運転免許のオートマ限定だと31時限程度の運転時間が定められています。既存の航空法であれば、飛行の許可承認を国から得るために必要な飛行時間は10時間以上となっています。
車の運転免許と同程度の実技時間が求められるとしたら、講習中に行われる実技の時間が大幅に増えます。
忙しい社会人や学生にとっては、このあたりが免除されるだけでも民間資格を取得する価値があるといえるでしょう。
ここまでドローンの免許制度と民間資格について、運転免許の講習時間を例にして解説しました。
では具体的にドローンの免許を取得するにはどの程度の講習時間が必要なのでしょうか?
ドローンの国家資格を取得するにはどの程度の講習時間が必要か?
修了審査を受験するために必要な講習時間は2022年8月現在、以下のように検討されています。
- 一等初学者:78時間以上
- 一等経験者:26時間以上
- 二等初学者:25時間以上
- 二等経験者:9時間以上
※すべての限定項目を含む
上記の時間は25kg以上の機体や夜間、目視外といった限定項目を含む内容です。
一等ライセンスを取得する場合、初学者では78時間もの講習が必要ですが、経験者であれば26時間の講習で修了審査をうけることが可能です。
現代人は多忙なため、52時間も受講時間を短縮できるのは大きなメリットといえるでしょう。
52時間あれば1泊2日の旅行にも行けますし、2時間の映画であれば25本以上観ることができます。
78時間に驚いた方もいらっしゃるかもしれません。
しかし車の大型免許の場合、「普通免許の取得に約57時間+普通免許の保有歴3年+大型免許の取得に約30時間」が必要なことを考慮すると78時間以上の講習時間は妥当なところではないでしょうか。
現在のところ、1等ライセンスを取得するための条件として、2等ライセンスの保有歴やドローンの総飛行時間などは求められません。
1等ライセンスは初学者であれば78時間以上の講習が必要ですが、もっとも需要が高いであろう2等ライセンスに至っては、経験者であれば9時間で修了審査を受けることが可能です。
経験者は何を指すのか詳しくは不明です。(現在国土交通省に問い合わせております)
しかしすでに民間資格を保有しており、国交省に飛行申請を提出し許可承認を得て、ドローンを外で飛行させている人は経験者といってもよいのではないでしょうか。
過去の国家資格には創設当初と比較して難易度や受験資格が難しくなった資格も多数あり、1等ライセンスの取得を考えている方は早めに取得しておいたほうがよいでしょう。
現状の予定だと、操縦ライセンスが必須なのはレベル4に相当する飛行だけですが、後述する機体認証と合わせることで、「二等無人航空機操縦士にも許可承認が不必要になる」という大きなメリットが生まれます。
それぞれの特徴を調べた上でぜひライセンス取得を目指してください。
現時点では検討中の部分も多く、操縦ライセンスの仕様が最終的にどうなるか予測することは難しいため、操縦ライセンス取得を目指すのであれば、こまめに情報収集しておきたいところです。
9.免許制度がはじまると民間のドローンスクールはどうなるのか?
民間のドローンスクールは2022年8月現在で全国に1407ほどあります。そこから以下の3つに分類されます。
- 一等無人航空機操縦士までの講習が可能な機関
- 二等無人航空機操縦士のみの講習が可能な機関
- 技能証明の更新に必要な講習が可能な機関
2022年9月から民間の講習機関の登録の事前申請が開始されるため、7月までに3つのレベルの実習空域、実習機、設備、教材、講師が策定される予定です。
国に認可されているドローンスクールは1407ほどあり、それぞれのドローンスクールを管理している団体によって施設や実習機やカリキュラムなどが異なっているため、これらをある程度統一する必要があります。
従来も国が認めた管理団体によって民間のドローンスクールは管理されていましたが、免許制になるにあたりスクールごとに国が管理する形となります。
既存の制度ではスクールによって実技の時間が異なったり、異なったカリキュラムで講習が行われていました。
国家資格のカリキュラムについては国土交通省の監査が入りますが、一定の水準を満たすものについては民間の講習機関がそれぞれ策定してよいとなっています。
一方で民間の講習機関の認定は国だけでなく既存の管理団体で条件を満たした機関が外部監査を行うことも検討されています。
現在、民間のドローンスクールを管理する管理団体は全国で87あるといわれています。(2022年8月現在)
このうち一定の基準を満たす管理団体が外部監査を行う機関に指定されます。有力な候補としては官民協議会への参加実績があったり、傘下に多数のドローンスクールを抱える管理団体となるでしょう。
10.国家資格の今後のスケジュールについて
今後の流れとしては、2023年の早期に一等無人航空機操縦士の試験を実施することが目標とされており、7月までに制度の運用に必要となる基準などが整備される予定です。
9月5日からは民間のドローンスクールを講習機関として登録する手続きが始まります。
11.ドローンの機体登録制度とは
レベル3とレベル4は共に補助者なし、操縦者の目視なしのため、ハードルは高く、ドローンの墜落や行方不明といったトラブルが起きる恐れがあります。
ドローンが絡んだ事故が起きた時に責任の所在をはっきりさせるため、ドローンが行方不明になった時に見つけやすくするために作られる予定なのが、機体登録制度です。
機体の所有者、使用者を特定するための登録制度は2021年3月に閣議決定されており、操縦ライセンスと併せてスタートする予定です。
機体登録の際に求められる情報は、ドローンの種類、製造者、製造番号、所有者と使用者の名前や住所などで、国が通知する登録番号をドローンに表示する義務が発生します。
ドローンの機体登録は自動車の車検と似た部分が多く、ドローンの整備もチェックされる予定です。
機体の整備に問題があり、安全基準を満たしていないと判断された場合、整備命令が下されることもあります。
そして、機体登録制度の導入に伴う大きな変更が無人飛行機の定義です。
既存の航空法では、200g以上の機体をドローンと定義していました。
200g未満の機体はドローンではないため、先に書いた飛行禁止空域のルールが適用されず空港周辺など一部を除き、上空150メートル未満の場所を申請なしで飛行できました。
自治体の条例で規制され自由に飛行できないケースもありますが、鳥取砂丘のように申請をしっかりと行えば飛行を認めるところもありました。
もっとも、200g未満の機体であっても、飛ばすためには公園の管理事務所などへの申請を必要とするケースは多く、自由に飛ばせるわけではありませんが法律的には規制が緩めだったのです。
しかし、改正航空法で100g未満の機体は模型飛行機、100g以上の機体はドローンと定義されました。
機体登録制度でも100g以上の機体の登録が必要になる予定です。
したがって2022年6月20日以降に100g以上の機体を所有し飛行させる場合、ドローンの登録制度に登録し国交省に飛行の許可・承認を得てから飛行させる必要があります。
>>関連記事:ドローンの登録制度って何?いつから始まるのか?
12.機体認証制度の導入
機体の登録制度は2022年6月20日から開始されますが、レベル4飛行を達成するため機体の認証制度も始まります。
簡単に言うと「レベル4飛行をするときは、国が認証した機体の飛行しか認めません」というものです。機体の認証制度は大きく2つに分かれています。
・型式認証
・機体認証
以下順番に解説していきます。
型式認証
型式認証とは、設計・製造者からの申請で国が強度や構造、性能などを検査するものです。
設計だけでなく製造過程も含まれ、主にメーカーむけの認証制度と言えるでしょう。
第一種形式認証
型式認証は第一種型式認証と第二種型式認証の2つが整備される予定です。
まだ具体的な内容は決まっていませんが、第一種型式認証は山間部などの人口密度の低いエリアでの運用を目的とした基準から策定し、米国を参考とした基準を導入する予定で、かなり厳しいものになるかもしれません。
この厳しい水準が求められるのはある意味当然です。
なぜならレベル4の飛行とは、街中の人がたくさんいる場所において、目視外飛行の自動運転を行うようなものだからです。
例えば、東京都を飛行しているドローンのパイロットは沖縄からLTEを使って操縦しているかもしれません。
この状況で機体側の不具合で墜落となったら大問題になります。
目視外飛行+補助者の監視なしとなるため、機体側には様々なリスクを想定した安全機能や堅牢度、冗長性が求められるでしょう。
また設計したドローンを設計図通りに製造できているか確認するため製造過程も検査されます。
製造における検査内容は、主に品質管理と品質管理体制です。
国交省の資料に具体的な記載はありませんでしたがISO9001相当の基準が求められるかもしれません。
第二種形式認証
第二種形式認証は二等ライセンスと組み合わせることで以下の飛行場所や飛行形態において許可・承認が必要なくなります。
第二種形式認証+二等ライセンスで第3者上空を飛行しない以下の飛行は許可・承認が必要なくなる
・人口集中地区上空の飛行
・夜間飛行
・目視外飛行
・人、物、建物から30m未満の飛行
免許制が始まった後にドローンで仕事をする際は、「二等ライセンス以上+第二種形式認証以上の機体」が望ましいでしょう。
一方で第一種形式認証と区別するためリスクに応じて4つの区分が設定されています。
・「最大離陸重量 4kg 未満のもの」
・ 「最大離陸重量 4kg 以上 25kg 未満のもの」
・ 「最大離陸重量 25kg 以上のもの」
・ 「最大離陸重量 25kg 以上であってリスクの高い運航(※)を行うもの」
※目視外飛行、夜間飛行、人/物件から 30m 以上の距離が確保できない飛行、催し場所上空の飛行、人口集中地区(DID)、空港周辺又は 150m 以上を飛行する場合
こちらも第一種形式認証と同様に設計したものをしっかり製造できているか確認するため製造過程も検査されます。
第一種形式認証と第二種形式認証、ともに有効期間は3年と定められており、メーカー側は3年たつと更新する必要があります。
また「国は必要に応じて設計、製造過程の変更命令や形式認証の取り消しを行えることができる」とされています。
これらの基準が策定されるため、自作機などは以前よりも飛行許可・承認を得るのが難しくなるかもしれません。
13.操縦ライセンスと機体認証制度で許可・承認が不要になる?
前述したようにドローンの免許と機体認証を組み合わせることで一部の許可・承認が不要になります。
1等ライセンスはレベル4飛行を行えることが最大のメリットです。
2等ライセンスは一部の飛行態様において許可・承認が不要になることが最大のメリットとなります。
出典:国交省資料より編集部作成
カテゴリー3という新しい言葉がでてきましたが、カテゴリー3≒レベル4とお考え下さい。
1等ライセンスでもカテゴリー3の飛行を行うときは、許可・承認が必要になります。
一方で需要の多い「人口集中地区上空の飛行、夜間飛行、目視外飛行、人・物件30m未満の飛行」は、第2種機体認証以上の機体を使うことで個別の許可・承認が不要になります。
ビジネスを行う上で、申請後の許可・承認を得るまでのタイムラグが問題でした。
9時間の講習時間で2等ライセンスを取得することができ、この問題が解決できるのなら2等ライセンスにも十分な価値があると言えるでしょう。
14.まとめ
以上、ドローンの国家資格について解説しました。
レベル4での仕事を視野にいれて免許を取得したり、これからドローンの民間資格や国家資格を取得しドローン業界に転職するなど、選択肢が増えたのは私達にとって非常に喜ばしいことです。
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