測量ドローンは、建設・土木現場の生産性を大きく変える技術です。国土交通省が推進する「i-Construction 2.0」では、2040年までに建設現場の省人化率30%以上・生産性1.5倍を目標に掲げており、ドローン測量はその中核を担っています。本記事では、ドローン測量の仕組みから、2025年時点の最新機種(DJI Matrice 350 RTK・Mavic 3 Enterprise)、実在する導入事例、費用相場、必要な資格まで、現場導入に必要な情報を網羅的にお伝えします。
ドローンを活用した測量・点検について、まずはお気軽にご相談ください。
ドローン測量の基礎知識
ドローン測量とは?仕組みと基本原理
ドローン測量は、高解像度カメラやLiDARセンサーを搭載したドローン(UAV)で上空から地形データを取得し、専用ソフトウェアで3次元モデルやオルソ画像を生成する手法です。国土交通省の「UAVを用いた公共測量マニュアル」では、三次元点群の位置精度を0.05m以内・0.10m以内・0.20m以内のいずれかを標準と定めています。
基本原理は航空写真測量の応用です。ドローンが連続撮影した複数の写真の重複部分をもとに、SfM/MVS(Structure from Motion / Multi-View Stereo)技術で3次元モデルを自動生成します。機体に搭載されたRTK(リアルタイムキネマティック)対応のGNSS受信機とIMU(慣性計測装置)がセンチメートルレベルの位置・姿勢情報をリアルタイムで記録し、モデルの精度を担保します。
写真測量とレーザー測量(LiDAR)の違い
ドローン測量には「写真測量」と「レーザー測量(LiDAR)」の2つの方式があります。写真測量は高解像度カメラで地表を撮影し、SfM/MVS処理で3次元モデルを生成します。機材コストが100万円前後から導入できる点が強みですが、植生が密な場所では地表面のデータ取得が困難です。
レーザー測量はレーザー光を照射して対象物までの距離を高速に計測し、高密度な点群データを取得します。樹木の下の地表面データも取得可能なため森林地帯や傾斜地に適していますが、機材費用は500万〜3,000万円と高額です。2024年5月にはテラドローン社が国産UAVレーザー「Terra Lidar R」を発売し、従来の約3分の1の価格(1,000万円以下)で測量精度5cm以下を実現するなど、導入コストは下がりつつあります。
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ドローン測量のメリット・デメリット
ドローン測量の主なメリットは3つです。第一に、広範囲を短時間で計測できます。従来5日かかった測量が約1時間20分で完了した事例もあり、データ処理を含めても従来の約40%の人員で対応可能です。第二に、人が立ち入れない危険箇所(災害現場・急傾斜地・構造物上部)でも安全に測量できます。第三に、取得した高精度3Dデータを設計・施工管理・BIM/CIMにそのまま連携でき、建設プロジェクト全体の効率化に寄与します。
一方で課題もあります。雨天・強風時は飛行が困難で天候に左右されやすい点、航空法に基づく飛行許可申請が必要なケース(人口集中地区・空港周辺・150m以上の高度など)がある点、そして機材とソフトウェアの初期投資と操縦・解析スキルが求められる点です。特にレーザー測量は機材費が高額なため、自社導入と外注のどちらが費用対効果に優れるか、事前の検討が重要です。
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ドローン測量の導入ステップ
ステップ1:測量計画の策定
測量範囲・目的・必要精度を明確にし、飛行ルート・撮影高度・使用機材を決定します。飛行高度はGSD(地上解像度)に直結するため、必要精度から逆算して設定します。例えば、Mavic 3 Enterpriseで高度74m・GSD 2cm/pxの計測を行う場合、飛行速度5.6m/s・シャッター速度1/1000で安定したデータが得られます。
計画には安全対策も組み込みます。飛行禁止区域の確認、緊急着陸場所の選定、バッテリー切れ・通信途絶時の自動帰還設定、安全管理者の選任と作業員への教育を計画段階で整備してください。
ステップ2:機材の準備と点検
ドローン本体・カメラ(またはLiDARモジュール)・バッテリー・GNSSアンテナ・コントローラーなど、すべての機材の動作確認を行います。ファームウェアは最新バージョンに更新し、プロペラの損傷確認、コンパスのキャリブレーション、RTKモジュールの初期設定(基準局との通信確認)を飛行前に実施します。
バッテリーは飛行計画の所要時間に対して余裕を持って準備します。DJI Matrice 350 RTKであれば最大55分飛行可能ですが、実運用では予備バッテリー2本以上の携行が推奨されます。
ステップ3:飛行許可申請と法規制対応
人口集中地区(DID)や空港周辺、150m以上の高度でドローンを飛行させる場合は、国土交通省への飛行許可申請が必要です。DIPS2.0(ドローン情報基盤システム)からオンラインで申請できますが、審査には2〜4週間かかるため余裕を持って手続きしてください。
2025年12月以降、民間資格保有者に対する飛行許可申請の簡略化措置が廃止される予定です。今後は国家資格(一等・二等無人航空機操縦士)の取得がより重要になります。また、測量業務そのものには「測量士」または「測量士補」の国家資格が必要です。
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ステップ4:現地での測量作業
計画した飛行ルートでドローンを飛行させ、写真またはレーザーデータを取得します。写真測量ではオーバーラップ率80%以上・サイドラップ率60%以上を確保して連続撮影し、レーザー測量では適切なスキャンパターンとデータ密度を設定します。
GCP(対空標識)の設置も精度向上に効果的です。測量範囲の外周と中央部に均等配置し、トータルステーション等で正確な座標を計測します。RTK対応機では飛行中にリアルタイム補正が効くため、GCPの設置数を削減できるメリットもあります。
ステップ5:データ解析と成果物作成
取得したデータを専用ソフトウェア(DJI Terra、Pix4D、くみきなど)で処理し、3次元モデル・オルソ画像・点群データ・DSM/DTMなどの成果物を生成します。DJI Terraは2024年10月のv3.9.0でLiDARデータ処理に対応し、2025年1月のv4.4.0ではLiDARとRGB画像の融合機能も追加されています。
成果物は多様な用途に活用できます。土量計算、斜面安定解析、地図作成、構造物設計に加え、BIM/CIM(Building/Construction Information Modeling)と連携させることで建設プロジェクト全体の品質管理を効率化できます。i-Construction 2.0では、2026年度以降、大規模土工・山岳トンネル等の工種で自動・遠隔施工の本格導入が進む計画です。
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測量ドローンの選び方
測量精度とRTK/PPK対応
測量精度は機種選定で最も重要な要素です。国交省の公共測量マニュアルが求める精度基準(±5cm〜±20cm)を満たすには、RTK(リアルタイムキネマティック)またはPPK(後処理キネマティック)対応機が事実上の必須条件です。RTK対応機の測位精度は水平1cm+1ppm、垂直1.5cm+1ppmに達しており、GCPの設置数を大幅に削減しながら高精度な成果物を得られます。
飛行時間・ペイロード・環境耐性
広範囲を測量する場合は飛行時間の長い機種を選びます。大型機(Matrice 350 RTK等)は55分飛行が可能で、LiDARや赤外線カメラなど重量のあるペイロードも搭載できます。一方、コンパクト機(Mavic 3 Enterprise等)は45分飛行・持ち運びやすさが強みです。IP保護等級(防塵防水)も現場選定に影響するため、雨天時の運用可能性も確認してください。
搭載センサーの選択
写真測量にはメカニカルシャッター搭載の高解像度カメラが必要です。ローリングシャッターでは高速飛行時に歪みが生じるため、測量用途ではメカニカルシャッター機を選択してください。レーザー測量にはLiDARモジュール(Zenmuse L2等)が必要で、測定距離(最大450m)・測定精度(5cm@150m)・ポイントレート(24万点/秒)が性能の目安になります。
安全機能
全方向障害物検知・自動帰還(RTH)・ジオフェンス・フェールセーフは測量用機に必須の安全装備です。特にインフラ周辺や市街地での飛行では、ADS-B受信機による有人機検知機能も重要な選定基準になります。
機種選定のご相談も承っています。測量現場の条件に合った最適なドローンをご提案します。
最新測量ドローン紹介(DJI公式ラインナップ)
DJI Matrice 400(大型産業用フラッグシップ・2025年6月発売)
DJI Enterpriseの最新フラッグシップドローンプラットフォームです。最大飛行時間59分・最大ペイロード6kgを誇り、統合回転式LiDARおよびミリ波レーダーによる送電線レベルの障害物検知を標準搭載しています。映像伝送はO4 Enterprise Enhancedシステムを採用し、空中中継ビデオ伝送にも対応。大規模マッピング・AEC(建設・エンジニアリング)・送電線点検・緊急対応など幅広い用途に対応します。Zenmuse L3(最新LiDARモジュール)を搭載でき、1日100km²以上の広域測量も実現します。
DJI Matrice 4E(コンパクト測量専用機・2025年1月発売)
測量・マッピング・土木建設・採掘など空間計測用途向けに設計されたコンパクト産業用ドローンです。4/3型CMOSセンサー搭載の2,000万画素広角カメラ(メカニカルシャッター)に加え、4,800万画素の中望遠・望遠カメラを一体搭載した3カメラシステムが特徴です。内蔵RTKモジュールにより外付けRTKが不要で、センチメートル精度の測位を実現します。最大飛行時間49分・最高速度21m/s、機体重量は約1,219gとコンパクトで、小〜中規模測量から日常的な施工管理まで幅広く活用できます。
DJI Matrice 350 RTK(大型プロフェッショナル機・2023年5月発売)
Matrice 300 RTKの後継機として2023年5月に発売された産業用プロフェッショナル機です。O3 Enterprise伝送システムで最大20kmの1080p HD映像伝送を実現し、4アンテナ送受信による高い干渉耐性を持ちます。最大飛行時間55分、最大ペイロード2.7kg、IP45保護等級で過酷な環境にも対応します。Zenmuse L2(LiDAR)やZenmuse P1(フルサイズ写真測量カメラ)など多様なペイロードを搭載可能で、中〜大規模測量プロジェクトの信頼ある主力機として現在も広く導入されています。
DJI Zenmuse L3(Matrice 400専用・次世代LiDARモジュール)
DJI Matrice 400に搭載する次世代高精度空撮LiDARシステムです。1535nm長距離LiDARにより、反射率10%の対象物でも最大950m(100kHz)の検知距離を達成します。デュアル100MPカメラを搭載した複合水平FOV107°のRGBマッピングシステムとの組み合わせで、1日最大100km²のカバー率を実現。点群精度は高度120m飛行時で垂直3cm・水平4cm(RMSE)です。送電線検知にも対応し、21.6mmスチールコアのアルミ撚線を最大300mで検出できます。
DJI Zenmuse L2(Matrice 350 RTK対応・LiDARモジュール)
Matrice 350 RTK等に搭載するLiDARモジュールです。フレーム型LiDAR・高精度IMU・4/3型CMOSカメラを一体化しており、5リターン対応・24万点/秒のポイントレートで高密度な点群データを取得できます。検出距離は最大450m(反射率50%)、測定精度は水平5cm・垂直4cm(@150m)です。DJI Terraとの連携により、LiDARとRGB画像を融合した高品質な3D復元が可能です。Matrice 350 RTKと組み合わせた既存の測量システムとして、現場での実績も豊富です。
ドローン測量の導入事例
日特建設×KDDIスマートドローン 自動充電ポートを活用した65km遠隔測量(2025年)
2025年、日特建設・KDDIスマートドローン・KDDIの3社は、埼玉県蓮田市から約65km離れた群馬県神流町ののり面工事現場で、自動充電ポート付きドローンによる遠隔写真測量に成功しました。オペレーターが現場に行かずにドローンを遠隔操作し、のり面の出来形測量データを取得。建設業の人手不足と移動コスト削減を同時に解決する先進的な事例です。
旭建設×Starlink 35km先のトンネル現場からリアルタイム3D測量(2025年)
2025年12月、旭建設は宮崎県西米良村の地すべり対策工事現場で、衛星ブロードバンドStarlinkを活用したドローン遠隔操縦実証を実施しました。携帯電話の圏外エリアに位置する現場(本社から直線距離35km・車で往復4時間)から、リアルタイムの三次元空撮測量に成功。通信インフラが整備されていない山間部でもドローン測量が実用化できることを実証しました。
清水建設×KDDI 北海道新幹線トンネル現場で3D点群リアルタイム伝送(2024年)
2024年8月、清水建設・KDDI・KDDIスマートドローンは北海道新幹線・渡島トンネルの建設現場で、Starlinkを活用した3D点群データのリアルタイム伝送実証に成功しました。トンネル坑内で取得した高精度な点群データをリアルタイムで遠隔地に伝送・共有することで、施工管理の効率化と安全性向上を同時に実現しています。
テラドローン 国産UAVレーザー「Terra Lidar R」で測量コスト1/3を実現(2024年)
2024年5月、テラドローン社は国産UAVレーザースキャナー「Terra Lidar R」を発売しました。従来のLiDARシステムが数千万円規模だったのに対し、1,000万円以下の価格帯で測量精度5cm以下を実現。さらに同時発売の「Terra Lidar Dual」は国内初の陸空両用3次元測量に対応しており、UAV測量と地上スキャンを1台で完結できます。LiDAR測量の導入障壁を大幅に下げた製品として注目を集めています。
ドローン測量の費用相場
自社導入する場合の費用目安
写真測量用のドローン一式(RTK対応機+ソフトウェア)は約100万〜300万円で導入できます。Mavic 3 Enterprise+RTKモジュールの組み合わせであれば比較的コンパクトな予算で始められます。一方、LiDAR測量はセンサー単体で数百万〜数千万円が必要でしたが、Terra Lidar Rの登場により1,000万円以下での導入も可能になっています。
外注する場合の費用目安
写真測量を測量会社に外注する場合の相場は30万〜100万円程度(面積・地形条件による)、レーザー測量は30万〜300万円超です。1haあたりの単価は2〜4万円程度が目安で、面積が広くなるほど単価は下がる傾向にあります。起伏のある土地や植生が密な現場では追加費用が発生する場合もあるため、事前に現場条件を測量会社と共有することが重要です。
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よくある質問(FAQ)
Q. ドローン測量にはどんな資格が必要ですか?
ドローンの操縦自体に免許は必須ではありませんが、人口集中地区や空港周辺での飛行には国土交通省の許可が必要で、国家資格(一等・二等無人航空機操縦士)の取得で申請手続きが簡略化されます。2025年12月以降は民間資格による簡略化措置が廃止されるため、国家資格の重要性が高まります。また、測量業務そのものには「測量士」または「測量士補」の国家資格が必要です。
Q. ドローン測量の精度はどの程度ですか?
RTK対応機を使用した場合、水平精度1cm+1ppm、垂直精度1.5cm+1ppmが標準的な性能です。GCP(対空標識)を適切に配置すれば、写真測量でも±5cm以内の精度を達成できます。国交省の公共測量マニュアルでは、UAV測量の三次元点群位置精度を0.05m以内・0.10m以内・0.20m以内のいずれかと規定しています。
Q. i-Constructionでドローン測量は義務化されていますか?
ドローン測量そのものが義務化されているわけではありませんが、i-Construction 2.0ではICT施工の標準化が進められており、3次元測量データの活用が事実上の標準になりつつあります。2026年度以降は大規模土工や山岳トンネルなどで自動・遠隔施工の本格導入が予定されており、ドローン測量の需要はさらに拡大する見通しです。
Q. Phantom 4 RTKは今でも使えますか?
DJI Phantom 4 RTKは生産終了(SDK版はディスコン、SE版は在庫限り)となっており、新規購入は困難です。後継機としてはDJI Mavic 3 Enterprise+RTKモジュールが同等以上の精度とより優れた携帯性を備えており、乗り換え先として推奨されます。既存のPhantom 4 RTKは当面使用可能ですが、ファームウェアアップデートやサポート終了のスケジュールを確認しておくことを推奨します。
まとめ
測量ドローンは、i-Construction 2.0の推進とともに建設・土木現場での必須ツールへと進化しています。2025年時点では、大規模測量にはDJI Matrice 350 RTK+Zenmuse L2(LiDAR)、小〜中規模にはDJI Mavic 3 Enterprise+RTKモジュールという選択が主流になりつつあります。
導入を検討する際は、まず測量の目的と必要精度を明確にし、写真測量とレーザー測量のどちらが適切かを判断してください。自社導入と外注のコスト比較、必要な資格の取得計画も含めて総合的に検討することが成功への近道です。
旭テクノロジー(ATCL)は、DJI・ELIOS・Skydio等の多様な機体を活用したドローン測量・点検サービスを提供しています。現場の条件に合わせた最適な測量ソリューションをご提案します。
著者プロフィール
株式会社旭テクノロジー(ATCL)ドローン事業部
1984年創業、兵庫県姫路市に本社を置く株式会社旭テクノロジー(代表取締役:幸長保之)は、プラント事業・再生可能エネルギー事業・ドローン事業の3本柱で事業展開しています。ドローン事業部では、国家資格対応ドローンスクールの運営に加え、インフラ点検(下水道・橋梁・鉄道構造物)・空撮・農薬散布・自動警備など幅広いドローンソリューションを提供。姫路市・明石市での下水道管路点検公開検証、神戸電鉄の鉄道構造物維持管理支援、茨城県のドローン自動警備実証実験など、官民問わず多数の実績があります。本記事はATCLドローン事業部が一次情報・公開資料をもとに執筆・監修しています。











