【2020年最新版】ドローンの農薬散布における市場動向について
現在、無人のラジコンヘリに変わる新しい農薬散布の方法として注目されているドローン。
今回は、そんなドローンにおける農薬散布の市場動向についてご紹介したいと思います。
今後、ドローンを活用した農薬散布の導入やドローンビジネスへの参入について興味がある人は、ぜひチェックしてみてください。
◆日本における病害虫防除の現状
日本国内は温暖で多雨・多湿な季候条件のため、病害虫が発生しやすいという環境にあります。
そのため、食料の安定的な生産のためには、病害虫の防除は欠かせない作業となっています。
しかし、防除作業というのはかなりのハードワークが要求されるため、近年、農業従事者の減少や高齢化に伴い、利便性の高い無人ヘリコプターやドローンなど無人航空機での農薬散布に需要が高まっています。
無人ヘリやドローンなどによる空中防除は、主に水稲、畑作、果樹、森林等の病害虫防除に使われるほか、施肥や、調査、近年では精密農業などにも利用されています。
空中防除による何よりのメリットは、広いエリアに一気に防除を行うことができるため、労働力を軽減したり、防除のコストを削減できる点が魅力的な所と言えます。
◆無人ヘリコプターとドローンの違い
無人ヘリコプターとドローンは、どちらも無線技術を通じて遠隔で機体を操作するため、有人ヘリコプターとは違い、比較的機体が小型である点が挙げられます。
ただし、ドローンの場合は、マルチローターと言われるように、多数のプロペラを回転させ、安定した飛行が可能なため、より小型で機動性に優れているなどの違いもあります。
- ―農薬散布用ラジコンヘリ―
- ・作業料金が単位面積で比較して安価に実施できる
・有人ヘリによる散布が難しいエリアでも散布が可能
・機体の値段が高い
・機体が大きく、重いため取扱いに3~4人要る。
・1回の飛行で多くの散布ができる
・操縦は結構難しい。
・飛行騒音が大きい。
・狭い圃場(ほじょう)には難しい
・登録機体数:約2,800機 (平成30年2月末)
・認定オペレーター:約11千人(平成30年2月末)
- ―農薬散布用ドローン―
- ・ヘリタイプと比較して機体が小さく機動性に優れている
・機体の値段はヘリと比べると安い。
・重量が軽いため取扱いは2人(操縦士と合図マン)でOK。
・操縦は簡単。
・飛行騒音が比較的小さい。
・中山間地域や狭小な圃場での利用が可能。
・登録機体数:約700機 (平成30年2月末)
・認定オペレーター:約2,800人 (平成30年2月末)
◆無人航空機による散布等の実施状況
無人ヘリコプターやドローンなどによる無人航空機による散布は以下の通りです。
平成22年度から平成28年度までの日本国内における空中防除の実績を見た場合、空中防除における主要な農作物は稲作であることがわかります。
散布面積は、毎年約90万ha前後を推移しており、ほとんど変化はありません。
続いて麦類、大豆類の防除が続き、いずれも6〜7万ha、5〜6万ha前後で推移しています。
空中防除における合計で見た場合でも、105万ヘクタール前後で安定した横ばいの動きになっており、今後も無人航空機による空中散布の需要は続く見込みと予測されます。
また、ドローンの普及によって、今まで防除が困難であった地域でも防除が可能になるため、空中防除の需要が増加する可能性も高いと言えます。
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◆ドローンによる農薬散布の普及状況
では、次に、ドローンにおける農薬散布状況を見ていきたいと思います。
<作業別の実施延べ面積>
(H29年度速報値。括弧内はH28年度実績)
○ 水稲防除: 7,000 ha (586 ha) →前年比:1,194%
○ 麦類防除: 700 ha (0 ha) →前年比:70,000%
○ 大豆防除: 500 ha (97 ha) →前年比:515%
○ その他: 100 ha (1 ha) →前年比:9,900%
○ 合計: 8,300 ha (684 ha) →前年比:1,113%
<地域別の実施延べ面積>
(H29年度速報値。括弧内はH28年度実績)
○ 東北・北海道: 1,900 ha (2 ha) →前年比:95,000%
○ 関 東: 400 ha (97 ha) →前年比:412%
○ 東 海: 400 ha (0 ha) →前年比:40,000%
○ 北 陸: 1,900 ha (138 ha) →前年比:1,376%
○ 近 畿: 50 ha (28 ha) →前年比:178%
○ 中国・四国: 2,300 ha (342 ha) →前年比:672%
○ 九 州: 1,400 ha (77 ha) →前年比:1,818%
ドローンによる農作散布の開始は、ここ2〜3年の動きです。
そのため、現段階では、普及状況としてまだまだこれからという感じです。
ただし、前年度と比較すると明らかに増加しており、市場の認知度の拡大とともに、一気に需要が爆発する可能性を秘めている状況と言えます。
◆ドローンの登録機体数とオペレーター数の状況
では、続いて、平成29年度〜30年度における農薬散布用ドローンの登録機体数とオペレーター認定数のデータを見ていきたいと思います。
尚、「登録機体数」についてですが、購入した農薬散布用ドローンは農林水産省(正確には農林水産航空協会)に届け出が必要となっており、その数となっています。
そのため、単純に考えて、市場に出回っている農薬散布用ドローンの機体数と考えることができます。
また、「オペレーター認定数」は、農薬散布用ドローンを操縦するために認定機関から発行されたライセンスの数となります。
<無人航空機機体登録数>
・平成29年3月末 ドローン:227(100%)、無人ヘリ:2,818(100%)
→合計登録数:3,045体
・平成30年2月末 ドローン:695(306%)、無人ヘリ:2,775(98%)
→合計登録数:3,470体
<無人航空機オペレーター認定者数>
・平成29年3月末 ドローン:878(100%)、無人ヘリ:10,540(100%)
→合計認定者数:11,418人
・平成30年2月末 ドローン:2759(314%)、無人ヘリ:10541(100%)
→合計認定者数:13,300人
※登録認定等機関の報告に基づく。
※()は増減率
※農林水産省「農業用ドローンの普及に向けて」より引用
https://www.maff.go.jp/j/kanbo/smart/pdf/hukyuukeikaku.pdf
現在の農薬散布市場の拡大をうけ、年々農薬散布用ドローンの機体登録数が増加しているのが確認できます。
※日本農業新聞 2019年4月12日より引用 https://www.agrinews.co.jp/p47350.html
また、ドローンを操縦するオペレーターに関しても同様に、前年度から300%以上の増加を記録しており、年々市場が拡大していることが理解できます。
◆ドローンの農薬散布市場における今後の課題
このように、現在急成長中のドローンによる農薬散布市場ですが、一つ早急に解決すべき課題も存在します。
それが「空中散布可能な農薬が少ない」というものです。
通常、地上で散布する農薬は低濃度で散布するため希釈倍率が1000~2000倍ほど。
そして無人ヘリやドローンなど空中散布用の農薬は、濃い濃度で一気に空中から散布をするため、希釈倍率としては8~16倍ほどでかなりの高濃度となっています。
しかし、現在この空中散布に対応できる高濃度の農薬として登録を受けている農薬は、2018年3月時点で271剤となっており、これは決して多いとは言えません。
現在農水省内でも無人航空機での散布の促進のため、既に登録がある農薬等についても、高濃度な農薬の適用を拡大できるよう調整中です。
これら国の動きが加速すれば、さらに空中防除における需要が広がっていくと考えられます。
・・・いかがでしたでしょうか。
ドローンの農薬散布における市場動向について詳しく解説していきました。
年々市場拡大を続けるドローンの農薬散布について、これからもますます目が離せませんね。
また最新情報等もこちらでお伝えしておきますので、今後の動向もぜひチェックしてみてください。
それでは、ありがとうございました。
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※参考文献
・農林水産省「病害虫防除に関する情報」
http://www.maff.go.jp/j/syouan/syokubo/gaicyu/index.html
・農林水産省「無人航空機による農薬散布を巡る動向について」
http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/suishin/meeting/wg/nourin/20180323/180323nourin01-4.pdf
・農林水産省「農林水産航空事業について」
http://www.maff.go.jp/j/syouan/syokubo/gaicyu/pdf/setumei.pdf
・農林水産省「農林水産航空事業の実施状況の推移」
http://www.maff.go.jp/j/syouan/syokubo/gaicyu/g_kouku_zigyo/attach/pdf/index-19.pdf
・農林水産省「平成28年度 無人航空機による散布等の実施状況(都道府県別)」
http://www.maff.go.jp/j/syouan/syokubo/gaicyu/g_kouku_zigyo/attach/pdf/index-20.pdf
・産業用無人航空機用農薬 – 農薬インデックス
http://mujin-heri.jp/index_top.html
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